2011年10月アーカイブ

望遠鏡への搭載試験

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2011-10-24-13-44-50.jpg
先週から、HSCの筐体部分を望遠鏡に搭載する試験が始まりました。広視野化に伴い、レンズが大きくなったため、機械的なクリアランスが厳しくなりました。望遠鏡に搭載する手順に間違いがないかを確かめる試験が、11/8まで続きます。

この試験の間望遠鏡を専有するため、通常の観測はできません。すばるユーザーの皆さん、ごめんなさい(SM)。


BEE ボード

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昨日までで CCD から出て来た信号デジタル信号に変換するところまで来ました.画面上に CCD の画像が表示されるまで後少しです.今日紹介する写真は BEE (Back End Electronics) ボードです(といっても見えづらくて,上から三段目なのですが).このボードが FEE (Front End Electronics) ボードを動かし,FEE ボードが読んだ電圧値を順次.汎用のネットワーク(TCP/IP)で送信できるようにパケットの中に詰め込みます.ギガビットのネットワーク経由でこの BEE ボードに問い合わせをすると,BEE ボードが順次記録してある情報を送信してくるので,これをパソコンで解釈することで,天文業界で良く用いられる FITS 画像という形式に保存することができます.
東京大学と共同で開発されました.(YU)

FEE ボード

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昨日の blog では CCD から出力される信号を紹介しました.それを記録するエレキが今日の写真です.写真上部に見える金属の板が CCD を載せるコールドプレートです.オシロスコープに映し出された谷と谷の間が一つのピクセルに対応しますが,このときの基準電圧との差を信号として読み取り,16bit のデジタル信号(0-65535 の値)に変換します.オシロスコープの写真を見ると,一つの周期が約8マイクロ秒(8/1,000,000秒)だということがわかります.2048 x 4096 ピクセルを持つ1チップのデータを 4ch に分けて同時に読み出すことができますので,512 x 4096 個の波形をこのボードの一つのチャネルが調べて変換します.科学観測用の CCD が 116 枚ありますから途方もない数ですね.(YU)

読み出し信号

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受け入れ駆動試験中の CCD が出力する信号がこれです.4つのチャネルに分けて 2048 x 4096 ピクセルの信号を読み出します.各チャンネルの電圧出力値をオシロスコープで表示させてみました.それぞれの波形は同じ形の繰り返しに見えますが,このときはほぼ真っ暗な中で撮像したためにすべてのピクセルが同じ値を持つためです.波形の中に見られる,下にさがるところ(リセットシグナル)から始まり,右に向って次のリセットシグナルまでが一つの周期で,一つのピクセル分の情報に対応します.まず,リセットシグナルで始まり,基準の電圧値が出力されます.その後立ち上がり,わずかに基準電圧より高い分が実際に光が当たった量を表す電圧値として出力されています.この後,このアナログ信号をデジタル信号に変換し,記録しています.たった一つのチップの二次元の画像が出てくるまでに,単純なことの繰り返しですが,とてもたくさんのことが行われています.(YU)

今年のノーベル賞

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今年のノーベル賞は、私たちと分野が近い人々が受賞しました。
その内の一人は、昔からよく知っていたので、おめでとうとメールを
送っておいたら、先日返事がきました。同様なメールをたくさん受け取って
いるのだろうと思いますが、律儀ですね。ノーベノレ賞((c)Kochikame135-5)
ではなくて、本物のノーベル賞であるところがすばらしい。

彼らが中心となって進めている米国のプロジェクト、WFIRSTは、ずいぶん
先が長い計画のようですから、本当にHSCで何か一緒に仕事をしましょうと
いうことになるかもしれませんね(SM)。


差出人: Saul Perlmutter
件名: Re: Congratulation !
日時: 2011年10月21日 12:19:26 GMT-10:00
宛先: Satoshi Miyazaki

Thank you, Satoshi!
I'm overwhelmed -- in all senses of the word (as you may guess by the even-longer-than-usual delay in email response). I very much appreciate your message, and I hope we get a chance to work together sometime soon, perhaps with your exciting Hyper Suprime-Cam.

My best regards, --Saul

On 10/4/11 1:13 PM, Satoshi Miyazaki wrote:
Hi Saul,

I read that you got the award ! Congratulation !

-satoshi

CCD の箱

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CCD 収納棚の中には非帯電性の樹脂ケースに一つ一つ厳重に入れられた CCD が入っています.樹脂ケースの中でも CCD が導電性の緩衝材(写真黒スポンジ)と接触して傷がつかないように,さらにガラス板とそれを押さえるアルミの枠(写真銀枠)でがっちりと CCD を衝撃から守っています.これだけ厳重だと,CCD を取り出すのも大変ですが,壊さないための対策なので仕方がありません.黄土色のケーブルはフレキシブルケーブルで,読み出し回路につながるケーブルです.(YU)

QEベンチ

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PA190372.jpg国立天文台三鷹キャンパスでは今日から特別公開が始まりました.22日(土曜日)までの予定です.あいにくのお天気ですが,普段は入れない施設も公開されているので,ぜひ見学に来てみてください.HSC 製作中の急な機械加工等でもお世話になっている先端技術センターマシンショップも公開されています!

さて,今日の写真紹介です.これも昨日の CCD 受け入れ試験に使う装置です.通称「QE(quantum efficiency)ベンチ」と呼んでいます.
昨日は X 線源からの放射線を使い転送効率を測定していました.この装置は X 線源の代わりに使います.右端の光源からの光をモノクロメータで単色光にし,左端の積分球を通すことで一様光にして,CCD 面に照射します.その光量は積分球の一部に取り付けてあるフォトダイオードを用いて常にモニターしているので,入ってきた光子の量と CCD が検出した光子の量を比較することが出来ます.この比は「量子効率(=QE=感度)」というもので,CCD の性能を表す重要なファクターの一つです.(YU)

CCD 試験用真空容器

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これは浜松ホトニクスで作られた CCD を一つ一つ受け入れ検査するための真空容器です.一枚ずつ丁寧に駆動試験を行い,最終的に合格したもののみを受け入れます.
写真は X 線源をあてて試験をしているところです.今も中に入ったシャッターが自動的に開き閉めされて写真を撮り続けています.

明日から国立天文台三鷹キャンパスでは特別公開「三鷹・星と宇宙の日2011」が行われます.特に土曜日の方が出展数が増えます.残念ながら今年度の HSC グループの出展はありませんが,天文データセンターで HSC を少し取り上げていただけるようなので,ぜひぜひお越し下さい(YU)

CCD 収納棚

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HSC では 116 枚の CCD チップを使います.およそ 3cm x 6cm の長方形のチップなのですが,一つ一つが厳重にプラスチックケースに保存されているので,それをまとめて保存する収納棚も巨大になります.CCD だけで人の高さほどの大きな収納棚一つ分を占めてしまうくらいになります.(YU)

制御計算機

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今日紹介する写真は新しく来た計算機です.
Hyper Suprime-Cam はすばる望遠鏡の 8m 主鏡の真上,およそ 16m の高さにある主焦点部分に搭載されますが,そこには制御するためのコンピュータが載っていません.その代わり,制御棟まで光ファイバーで信号線をつなぎ,制御棟にあるパソコンから制御をします.HSC の制御には3台のパソコンを使います.1台がカメラ全体の制御を行い,残りの2台がほとんどの CCD の読み出し等を担当します.今回調達したパソコンはカメラ全体の制御を行うパソコンのバックアップ機です.ただ,バックアップだけではもったいないので,運用時には出て来たデータを検査するためのパソコンとして活躍する予定で,緊急事態にはもう一台の制御計算機の代わりを出来るようにしてあります.(YU)

真空容器の分解完了

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先週から続いていた真空容器の解体が無事完了しました.
奥の机の上にある紺色の物体が容器の外壁です.その右にあるのは読み出し用エレキボードが刺さる部分です.手前にある灰色の穴空き板は CCD を配置するためのコールドプレートで,すっかり CCD も取り外されてしまいました.
これから調整等を経て,最終版のカメラ部組み立てに移行する予定です.(YU)

立ち上げカメラ調整中

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HSC はいろいろなコンポーネントの組み合わせでできています.主にカメラ部,補正レンズ,主焦点ユニットに大別されます.(参考)
複雑なシステムなので,完成したからといって,いきなりすべてをつないで動かすことはとても難しいことです.
そこで,段階をおって準備を進めていますが,一つの試験としてカメラ部以外の,補正レンズと主焦点ユニットをすばる望遠鏡に搭載することも予定されています.
カメラ部にしか画像を取得する機能がないので,カメラ部を載せないで制御をするとなると代替手段を考える必要があります.その代替手段が写真の「立ち上げカメラ」です.といっても市販のカメラです.制御するためのパソコンも接続してあります.
HSC の特長である広い視野のうちのとても小さい領域だけを贅沢に使って試験を行います.ちょっとおかしな話ですが大切な試験です.(YU)

再度解体

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一通り今回のセットアップで予定していた試験は終りました.
現在はデータを精査しながら,機器の性能や調子を確かめたり,組み立てプロセスに問題がないかを検討しています.
写真は昨日の様子です.銀色の枠に囲まれている紺色のカメラ部は試験中,真空に引かれ,-100度に保たれていましたが,それを常圧,常温に戻し,解体作業を行っています.(YU)

オートガイダーの試験

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数分以上の長時間露光をする時は、天体位置のずれを逐次検出して、望遠鏡の指向方向を微調整していきます。このようなシステムをオートガイダーと呼びます。現在その試験が進んでいます。左写真は、擬似星を作る光源(銀色の筒・Kawa博士設計)をデュワー下に設置したところです。スカートのような遮光布の中にこの装置が入っていました。
スクリーンショット 2011-10-11 11.28.23.png
















オートガイダー専用のCCDがデュワーの中に4個入れられています。ガイドに使用する星の像ができる付近だけデータを読み出すと、左図のような絵が得られます。右の方に星が写っているのが分かりますか?上の方にテール引いているのは、読み出し中もシャッターを閉じていないからです。位置測定に影響がないことは、確認してあります。数秒に1回読み出して、ピーク位置を検出し、前回からの差を求めて補正します。これで安定した像が得られるわけです。(SM)
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9月30日に東京・三鷹から送り出したフィルター交換装置(FEU)が、10月7日にハワイ島マウナケア山頂のすばる望遠鏡に到着したという連絡を受けました。

ハワイ観測所スタッフに荷下ろしをしてもらい、来週から始まる試験を待つことになります。東京とハワイでは、距離は遠く離れていますが、同じ国立天文台ですので、密に連絡を取りあいながら仕事を進めています。三鷹本部からは、FEU開発主担当のUra氏が10月13日にハワイに飛ぶことになっていて、望遠鏡搭載試験を現地職員と共同で行います。。

この写真は、望遠鏡ドームの最下部にある荷受けをするスペースで撮影したものです。フォークリフトの向こうに見える白っぽい円柱は、望遠鏡を支える構造で「ピアー」と呼ばれています。(SM)



撮像試験

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写真 11-10-07 17 03 06 (HDR).jpg
私たちが開発中のすばる望遠鏡用カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC) のカメラ部の検出器(CCD)面の前面をアルミ蓋からガラス窓に交換したことは先日お知らせしました.
アルミ蓋のときはカメラ内部で漏れた光がないか等を調べる試験をやっていたのですが,カメラ本体に光を入れる試験が出来ません.というわけで,ガラス窓に交換したわけですが,HSC は暗室にあるわけではないので,今度は周囲の光が気になるようになります.これを解決するために,今日は遮光する作業を行いました.ちょうど床をむいている HSC の CCD 面を,黒いスカートのような遮光布で覆うことで室内灯などを遮断します.(YU)

波面検査装置

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今日は少し前の写真です.
紺色の真空容器(デュワー)の上に取り付けられた半月状の黒い装置の紹介です.
これは波面検査装置で,シャック・ハルトマンテストと呼ばれる手法で波面の乱れを調べます.理想的な光学系ならきれいな波面なのですが,どこかにゆがみがあると波面が乱れてしまいます.すばる望遠鏡は,この波面をきれいに戻す制御を主鏡などにかけることで,高い結像性能を保っています.その制御のためのパラメータを決める装置です.
普通の観測用フィルターと同じようにフィルター交換機構にフィルターとして搭載されるので「シャック・ハルトマン・フィルター」と呼ばれています.(YU)

電源の交換

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今日は HSC のカメラ部を制御するための装置が搭載されているエレキラックのなかにある電源を交換しました.
この電源は CCD を駆動するための電源です.今までのものは余力がありすぎたので,ちょうど良いものに交換しているところです.この作業は数日続く予定です.(YU)

FITS ヘッダ

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Screen Shot 2011-10-04 at 7.23.06 PM.png
今日はややマニアックな更新です.
天文業界では撮影した画像に様々な情報を一緒に記録することが多いです.これを FITS ヘッダと呼んでいます.観測時刻,積分時間,観測場所等々の情報と共に,CCD の位置を表す情報や,その位置が天球面上のどの位置に対応するかを表す情報も記録されます(World Coordinate System; WCS).この情報をもとに専門の画像表示ソフト(たとえば ds9)を使うと画像表示ソフトが適切に表示する場所を決めてくれます.実際にいれた値が正しければ,現在の CCD のレイアウトと同様の画像が見えるはずなのですがどうでしょうか?オレンジ色の部分が CCD の入っている部分で,青が CCD の入っていない部分です.東西に欠けた部分がありますが,ここはオートガイド用の CCD なので別に扱います.大丈夫そうに見えます?(YU)

FEU 動作の様子

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先日出荷したフィルター交換機構の実際の交換の様子をご紹介します.今回のビデオは前回とは違い,フィルターを搭載するスタッカーの動作だけではなく,実際にダミーフィルターを搭載して入れ替える試験中に撮影しました.最初は横から見上げたシーンで,次にカメラが主鏡を覗き込む視点に変わります.実際の時間の8倍速で再生しています.

ちなみに,みなさんの質問やコメント等は随時受け付けています!(YU)